山下千朝(やました ちさ)さんってこんな人
1986年生まれ、和歌山県紀の川市貴志川町出身。
首都大学東京(現:東京都立大学)教育学修士。
公益財団法人での職務経験を経て、スリランカへ。
「オーガニック&エコツーリズム」ビジネスコーディネーター・PRとして現地法人にて3年間勤務。
その傍ら、浄土宗僧侶としても「地域や社会と協働する仏教・寺院」をテーマに活動。
2019年よりAmrita株式会社を起業。現在代表取締役として、「仏教・教育・食」にフォーカスした事業を
スリランカ・インド・ミャンマー・タイなどのアジア圏をフィールドに行っている。
教育学の修士を取得しながら、スリランカでの就業経験を持ち、さらに和歌山にUターンし起業(Amrita株式会社)という異色の経歴を持つ山下さん。ご実家がお寺であったことから、浄土宗僧侶としての活動もされているとのこと。
vol.2では、スリランカでの生活を経て、現在の企業活動に至った経緯を聞いていきたいと思います。(vol.1はこちら)
スリランカで知った、「生活」をすることの難しさ
--さて、スリランカでの生活が始まったというところまでお聞きしましたが、実際の現地での様子はどんなものだったのでしょうか?
まず、ここで感じたことは、基本的な「生活」をすることがどれだけ大変で、最低限のものが揃っているということがどんなに恵まれているかということに気付きました。
毎日の飲み水を確保することやトイレットペーパーを手に入れることがとても困難でした。また、女性特有の事情ですが、生理用品が手に入りづらい、衛生環境が整っていないということを体験しました。
--日本だと当たり前に揃っているものが、簡単には手に入らないんですね……。
ただ、悲観的になることばかりでもなくて、こうした、現地で生理用品が手に入らない、環境が整っていないという経験から、現在、お店でも扱っている「モミジ・ナチュラル」という布ナプキンを取り扱うことにもつながっています。
コロンボで現地の女性たちが作っている商品なのですが、繰り返し使える、ゴミが発生しないなどの観点も併せて、環境にも地域にも優しい商品です。
--現地に行ったからこそ気付くことのできる、貴重な視点ですね。お話をうかがっていて気になったのですが、そもそも山下さんの思考や行動の源泉になっている動機ってなんなんでしょうか?
そうですね…….。
仏教の教えの中に、仏様のもとではみな「平等」だと説かれているのですが、なぜ、わたしたちの世界にはこんなにもギャップがあるのだろうと疑問に思っていました。
例えば、現代のシステムのなかでは、化学肥料を使って、設備や機材投資をしながら、単一作物を大量生産する慣行農業のスタイルだと、農家は食料供給システムの底の立場からは抜け出せません。
安く、大量に作って、卸業者や小売業者が順々に買い取り、農家に残る利益は微々たるもの。
その仕組みを少しずつ変えていかないと、ずっと搾取されていく構造は変わらないんじゃないかと思っていたんです。既存の農業や流通業のあり方を変えないといけないことは明らかです。だけど、それを事業にする方法が分からなかったので、いろんな場所で学び、やっと、形になってきたという感じでしょうか。
食事を大切にすることは、誰かを大切にすること
--そういえば、仏教、社会的企業ということはお聞きしてきましたが、なぜ、食というジャンルにたどりついたのでしょうか?
これは、スリランカの文化から学んだことにつながっています。
スリランカでは、挨拶として、「キャーワダ?(ご飯食べた?)」と聞くんですね。さらに、それは社交辞令的なものに留まらず、どのお家でも、訪問する人がご飯を食べていなかった時のために、1-2食、余分にカレーを作っておくのがマナーなんですよ。
タクシーの運転手さんとの会話でも、ご飯を食べてないというと、あそこに食堂あるから寄ってく?と言ってくれるくらいに、彼らは、食事をとても大切にしています。
日本は、果たして「食事」という基本的なことを大切にできているのだろうか?と考えたんですね。
便利なもの、安くておいしいものはたくさんあるけれど、食事って、誰かを気遣ったり、共に食べる喜びが伴うものだと思っていて、そういうことを忘れて、便利なものやスピードを追求した先に何が残るのだろう?と。
さらに、こうして安く、早く、大量につくられたものを口にすることが、さらなる貧困を再生産しているのではないかと考えるようになりました。
--ここまでのお話を聞くと、フェアトレードって特別なことではなく、人と人がお互いを大切にするうえで当たり前のことだなと感じました。むしろ、いつかフェアトレードという言葉が、当たり前になって、なくなってほしいですね。
グローバルに考え、ローカルに貢献する
また、構造的な問題と絡めて、海外に出てみて、特に近年感じていることは、日本はこれからどんどん、アジアや発展途上国の輸出相手国先として成り立たなくなってくるということです。
納期や品質管理・サービスの面で、日本の市場はとても特殊で、これからGDPが下がっていくと、相手にされなくなる、先進的ではなくなっていく一方です。日本のマーケットが海外諸国にとって魅力的なものじゃなくなったら相手にされなくなるのです。
だからこそ、若い人は外に出て、グローバルな視点から日本を見てみるといいと思います。かなり、日本の特殊性に気付けると思います。その経験を経て、また地域に還元するという動きが出てきたら、日本もアジア諸国も、双方が互いを思いやり、対等な立場で手を取り合って歩める持続可能で公正な社会に向けて進んでいけるのではないかなと感じています。
--これからは、日本が上、アジア諸国が下、というような構造でもなくなってくるんでしょうね。そのような想いも反映されて、山下さんの販売されている製品は、かわいそうだから買ってほしいというアプローチではなく、本当にかわいくて思わず手に取ってしまう商品ばかりですよね。
特に、今、Amritaで取り扱っている紅茶やハーブティーは、スリランカ産のオーガニック茶葉やフェアトレード原料を使用している、とても香り豊かな一押しのものです。
本当にいいものを、適性価格で、みなさんにお届けできるよう、これからも頑張ります。
山下千朝(やました ちさ)さんってこんな人
山下千朝(やましたちさ)さんってこんな人
1986年生まれ、和歌山県紀の川市貴志川町出身。
首都大学東京(現:東京都立大学)教育学修士。
公益財団法人での職務経験を経て、スリランカへ。
「オーガニック&エコツーリズム」ビジネスコーディネーター・PRとして現地法人にて3年間勤務。
その傍ら、浄土宗僧侶としても「地域や社会と協働する仏教・寺院」をテーマに活動。
2019年よりAmrita株式会社を起業。現在代表取締役として、「仏教・教育・食」にフォーカスした事業を
スリランカ・インド・ミャンマー・タイなどのアジア圏をフィールドに行っている。
オンラインショップ:https://amritazl.com/
投稿者プロフィール
- 京都府宇治市生まれ、和歌山県紀の川市出身。和歌山大学観光学部在学中。わっと!編集者兼ライター。インターン経験やプロジェクトを経て、学生生活の傍ら、フリーの編集者として活動する。シーシャが好き。積読家。
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