私は2000年にバリ島に移住して、バリ人と結婚して、どっぷりローカル生活を始めたわけですが、日々の生活費を稼がなくてはなりません。
結婚して子供が出来、宗教行事も多く何かと忙しいので、家で出来る仕事を…と考えて、全4室のみの小さな宿を始めることにしました。
『バリ人の家』というのは、広い敷地の中に台所や風呂・トイレは共用で、寝室はそれぞれの家族で個別に建て、大勢で一緒に暮らしているという形式です。
男性は全員で家寺を継いでいかなくてはならないので、結婚しても寝室を分けるだけで、家からは出ていきません。ですので、何世帯もの家族が一緒に住んでいるのですね。
なのでバリ人のお宅は、敷地がとても広いのです。ところが、うちの家族は人数が少なくて、舅姑と結婚した私たちだけ。おかげで、敷地は半分以上が空いておりそこに宿を建てることにしました。
自宅の裏、ジャングルのような庭に建つバンガロー。
バリ島での建設は大変!設計から施工、資材調達まで、全て自分たちで行いました。図面は主人が引き、出来るだけ安くていい建築資材をあちこち探して回り、各パートによって職人さんを探し、なんと!建設開始から完成まで、下の子を妊娠・入院・出産・帰国などの一時中断もあって、4年もかかってしまいました!
朝食はこのテラスでどうぞ。
2009年の暮れに、初めてのお客様が泊まりに来てくれました。
当時はインターネットも飛躍的に発展して、ブログやSNSで発信する人も増え、私たちの小さな宿も口コミで沢山のお客様に来て戴くことが出来ました。
日本語と英語で宿の情報を発信していますので、世界中から色んなお客様がいらっしゃって、沢山の出会いがありました。
二階のテラスですが、高い木々、遠くに田んぼが見晴らせます。
我が宿の売りは、まるでジャングルの中のような緑あふれる庭と、日本人ならではの客室の清潔さ、そして広さです。
客室は100平米弱もあり、広く作られているので、家族連れのお客様にも十分余裕をもって滞在していただけます。ベッドはセミダブルが二台、ハリウッドツインになっています。フラットにも使えますし、普通のツインにもなります。
夜の客室をテラスから。
長くバリに住んでいると、特に自分が気に入っている場所というものが出てくるので、お客様をとっておきの場所にお連れしたり、一緒に初めての場所に行くのも私の楽しみです。
バリ島中、いたるところにある美しい寺院。
勝手に中に入れるものではないので、ぜひ地元の方とご一緒に!
私が特に力を入れているのが、私たちの村の行事をお客様にも体験してもらうことです。バリ島にはユニークな宗教行事が、今もずっと受け継がれて続いています。
そういう行事には旅行で来て参加するのは難しく、現地の人と一緒でないと情報もありません。そういった行事をお客様にご紹介し、一緒に体験してもらうのが私の一推しのバリ島旅行です!
ヒンドゥー教のバリ島では、死んだら火葬して、川や海に流し肉体を五大元素に還します。
葬儀は地域単位で行い、全員参加の元、決まった手順に従って故人を天界に送り出します。
バリ人にとっては、葬儀こそが人生の通過儀礼の中で最も盛大で大切なものであり
この義務は残された子供が負うものであります。
例えば…バリ島の火葬式は、世界でも有名なユニークな行事の一つ。世界中から参列者を招待する絢爛豪華な王族のお葬式や、数年分の地域の死者をまとめて火葬する合同葬儀など、準備に数か月から一年を費やす大イベント。前もって日程が分かっているので、旅行会社でも「クリメーション・ツアー」というものが催行されるくらいなんです。
他には、毎年3月にバリのサカ歴という、太陽暦と太陰暦を組み合わせた暦に合わせて、「ニュピ」と呼ばれる新年の大きな行事があります。(2022年は3月3日でした)
これは「サイレントデイ、静寂の日」として有名なのですが、この日は火の使用、電気の使用、仕事を含む一切のアクティビティが禁止される日なのです。
従って、なんと!飛行機の発着も無し、外出も禁止、テレビやラジオの放送も無し、インターネットも遮断、という一日。バリ人は、断食して瞑想して静かに過ごす一日を送るのがよし、とされているんです。
この禁止事項は、その日バリ島内に居る外国人観光客にも適用されるんですよ!グローバル化が進む世界において、未だにこれが実現できてしまうところがバリ島のすごさなのです!
しかし以前は、ニュピの時期に当たると、観光客はホテルの中にじっとしていなくてはいけないので避けていました。ですが、私は旅行者の頃に、このニュピを体験して以来、すっかり虜になってしまったんです!
夜になっても灯りをともしてはいけないので、ニュピの日は真っ暗。ニュピは必ず一番暗い夜、新月直前なので、夜になると本当に自分の鼻先も見えないほどの漆黒の闇。
ある程度文明化された所に住んでいる私たちは、真の闇を体験することってまず無いですよね。そんな怖いくらいの暗闇ですが…頭上を見上げれば、満天の星!!
写真提供:Buntaro Kato
その日は一日中、飛行機も自動車もバイクも全く交通が無く、生産活動も一切なく、大気を汚染するような活動が一切ないのです。なので、空気は澄み切っています。
そして、暗くなっても地上のどこにも明かりがついていないし、お月様も無いので、晴れているニュピの夜には怖いくらいの星が見れるのです。私はバリ島のニュピの夜に初めて天の川を見ました!あんな星空を見れるのは、未開のジャングルの奥地以外に、バリ島のニュピの夜以外無いでしょう。
ニュピの前には、様々な行事が行われます。
地域ごとに、「オゴオゴ」と呼ばれる巨大なモンスターが乗った御輿を作り、ニュピ前日の夜に担ぎだして練り歩くのです。
オゴオゴは村の青年団の管轄で、それぞれ意匠を凝らしたおどろおどろしい大きな人形を見て歩くのも、楽しみの一つです。
ニュピの前には、色々な宗教行事が行われますので、バリ島が最もバリ島らしい雰囲気に包まれる特別な期間です。
なので敢えて、お客様にニュピを体験していただくバリ島旅行を提案しています。一緒に行事に参加していただいて、夜に静かに雄大な星空を見上げる。一生思い出に残る素晴らしい体験になると思います。
ニュピは、大がかりな清めの儀式。
ニュピを迎えるにあたって、寺院から全てのご神体が海や川などの水辺に運ばれて
清められる儀式があります。
このように、バリ島でバリ観光をお客様に提案している私ですが、今回20年ぶりに和歌山に長く帰郷して、改めて和歌山の素晴らしさを見直しました。
半分は海に面し、半分は山々が連なる紀伊半島。地形も、広さも、バリ島に似ているところがあります。山の上の大寺院、海中の寺院、棚田、海岸、サーフィン、温泉。これらはバリ島と和歌山県の類似点です。
バリ島の棚田。和歌山にも棚田がありますね。
これは、バリ島北部にある「ギッギッの滝」。
バリ島には大小、多くの滝があり、近年は滝巡りブームが続いています。
和歌山には有名な「那智の滝」をはじめ沢山の滝がありますよね。
また、バリ島は宗教行事が生活の中心で、お寺に行く回数や行事の回数がとても多く、華やかで大規模なそれらの行事に惹きつけられて、世界中から外国人が訪れます。
サーフィンの世界大会が行われ、海と山が織りなすダイナミックな地形による、美しい景色を見に世界中から多くの観光客がやってきて、賑わっています。
そして、近年ではスピリチュアル・ブームといいましょうか、聖地巡りや滝巡り、ヨガのワークショップやリトリートに参加したり、バリ島に居るバリアンと呼ばれる呪術師やお坊さんを訪ねて行って、占いや治療をしてもらったり、といった『スピリチュアル・ツアー』に沢山の人が来るようになりました。
満潮時には海水に隔てられる、バリ島の「タナ・ロット寺院」。
このあたりの景観は、南紀の海岸沿いによく似ています。
和歌山県にも、那智の火祭りを始め、熊野速玉大社の例大祭や、和歌祭りなどそのほかにも多種多様な宗教行事としての祭りが各地で行われます。そして、気候が温暖で、果物の産地であり、稲作も盛んで田んぼがたくさん有る点もバリ島とよく似ているな、と感じます。
すでに多くの観光客が和歌山県に訪れていますが、もう少し海外からの観光客を呼び込めるように工夫すると、もっといい形で観光立県になるのではないでしょうか?
そのためには、あまり排他的になりすぎず、守るところは守り、開くところはおおらかに開く、ということが大切ではないかなと感じます。
ともあれ、バリ島と和歌山、大好きな二つの場所がこれからも私の帰る場所なのです。

投稿者プロフィール

- 大阪生まれ、和歌山育ち。バリ人と結婚後、バリ島に移住。主人の家に嫁に入り、現在2児の母です。バリ・ヒンドゥー教徒として、どっぷりバリ島ウブド村の生活に浸り、お供え物三昧の生活を送っています。自宅内の緑に囲まれた、4部屋のみの小さな宿「PRASANTI」を経営しています。